職場の人間関係が悪い原因は自分にあった!?意外な事実
職場の人間関係や事務所内の雰囲気が悪い―。1日の1/3もの長時間を過ごす空間の雰囲気が悪いことはあなたに多大なストレスをもたらしていることでしょう。日々のストレスを蓄積させないためにも、職場の人間関係や雰囲気は早期に改善したいところです。
ところであなたは、苦手な人がいるのは相手の人格の問題で、「自分には原因がない」なんて思っていませんか?真面目に仕事をしているだけの自分には一切非がない。果たして本当にそうでしょうか?
ならば、その人と接する時のあなたの態度・感情はどうでしょう。あなたの抱くその感情は必ず相手に伝染します。この記事ではその理由を分かりやすく解説しています。では、いきましょう!
1.「感情の伝染」と「共振共鳴」
あなたも昔、音楽室で見たことがあるかもしれませんが、楽器の調律や実験に使われる「音叉」という道具があります。
おんさ【音叉】
音響測定・楽器の調律などに用いる道具。均質な細長い鋼の棒を U 字形に曲げ、中央に柄をつけたもの。先端をたたくと、一定の振動数をもつ音を発する。
出典:三省堂
U字形の音叉の一方を叩くと、もう一方にも振動が伝わり音が鳴ります。もし、近くに同じ固有振動数を持つ別の音叉があればそれも鳴ります。この現象を共振共鳴といいます。
あらゆる物体は「固有振動数」を持っています。もしも外界から来た振動がこの固有振動数と一致すると、その物体も一緒に振動しはじめてしまうのです。
僕たちは、どんなに体重の重い人が乗ったとしてもそのブランコを揺らすことができると知っています。
そのためにするのは一定のリズムで背中を押すことだけ。最初は小さな揺れであっても次第にその揺れは大きくなります。これは、その人の乗ったブランコの固有振動数と背中を押すリズム(振動)が一致したからです。この現象のことを「共振」と呼びます。
もしも、コンクリートでできた橋の固有振動数と通行車両や突風による揺れが一致すると、橋は大きく揺れます。建物の固有振動数と地震による揺れが一致すると、建物は激しく揺れます。
ワイングラスの固有振動数と声の振動を一致させると、グラスを割ることだって可能です。バラエティ番組でみたことがあるかもしれませんね。そして、音に関する共振現象を特に「共鳴」といいます。
2.人間関係にも「共振共鳴」はある
実はこれと同じことが人間同士にも起こります。自分がいつも笑顔でいると、その楽しい気分が周囲に伝わり、自分がイライラしていると、そのイライラが周囲に伝わります。
だから、もし目の前の人がイライラしているとしたら、無意識で自分がその人に対してイライラしているために、共振共鳴した結果として相手がイラだっているのかもしれません。
2-1.職場内での「情動伝染」という感情の伝わり方
友達が爆笑してたからそれにつられて思わず笑ってしまったり。彼があまりにも楽しそうにはしゃぐのでこちらも楽しくなったり。子どもがあまりにもうれしそうに話すのでこちらもうれしくなったり。妻がひどく落ち込んでいたからこっちまで落ち込んでしまったり。同僚と自分のイライラ感が伝染し合って職場の雰囲気がピリピリしたり。
そういったことは、あなたも経験があるのではないでしょうか。
ある人の感情が、他の人に同様の感情的な影響をもたらす事象は、社会心理学では「情動伝染」と呼ばれています。
個人の感情は周囲の人の感情に影響を受けるものです。特に集団内においては、ある1人のメンバーの感情がどんどん周りに波及していくことが知られています。
とくに、怠慢・あきらめ・無気力といったネガティブな感情は伝染しやすいようです。そのため、集団内にやる気のないメンバーがいるとその無気力感が伝染し、集団全体のモチベーションが下がるというような現象が起きます。
昭和の名ドラマ『金八先生』に登場する「腐ったみかん」の話はこれと似ています。クラスのヤンキーを腐ったみかんに例えて、腐ったみかんは、接しているみかんも腐らせる。だから早く箱から取り出して捨てないといけない。そういう趣旨の話でした。
2-2.情報伝染は共感することとは違う
情動伝染は「共感」とは違います。共感というのは、相手が感じていることを主体的に自分も同じように感じたり理解しようとすることです。意識的・意図的にする行為ともいえます。
それに対して、情動伝染はもっと自然発生的な反応です。感覚的には「つられる」という言葉がしっくりきます。「他人の言葉・態度で傷ついた」とか「他人の言葉でイラついた」というのとも違います。情動伝染とは、自分も相手に影響され「同じ感情」を抱くことなのです。そう、感情というのは伝染るのです。
3.職場の人間関係に「情動伝染」を応用
相手に影響され、自分も同じ感情を抱くことが情動伝染です。では、これを感情コントロールや人間関係改善に応用することはどのように可能になるのでしょうか。ネガティブ・ポジティブの両方の感情についてそれぞれ分けて考えてみることにしましょう。
3-1.ネガティブ感情
自分がイライラしたりネガティブな感情に陥っているときは、その場の「誰かの感情に」つられているだけということがあります。これは伝染した感情なので、自分がそのネガティブ感情を抱く理由が本来ありません。
だから、何故落ち込むのか、イライラするのか、無気力なのか。訳もなくそういった感情になるときは、情動伝染を疑ってみてください。
周りの誰かの感情に影響されて「つられてる」だけだと気がつけばそれ以上、その感情に支配される理由も意味もありません。だってそれは自分の内側から出てきた感情ではないのですから。
3-2.ポジティブ感情
自分が「楽しい」「うれしい」などの感情を抱いているとき、そのハッピーな雰囲気は自然と周囲にも伝染します。それによって自分を取り巻く環境の雰囲気を明るいものに変えることができます。
こうしたハッピーなグルーヴ感、ノリ、バイブレーション。それが集団全体に充満すれば精神衛生上もたいへん好ましく、また集団としての生産性も向上するのではないでしょうか。
もしも今、自分の属する集団の雰囲気が悪いとしたら、その責任の一端は自分にもあるということなのです。自分のまとう空気が周りの空気に伝染・影響するということを忘れてはいけません。
4.人間関係を難しく考えない
とにかく「自分1人だけはハッピーな気持ちでいる」こと。これがポジティブな情動伝染を起こすために唯一必要なことです。あとは自分が周囲と接することで自然にその感情が伝染するのです。
「意のままに相手を何とかしたい」と考えているうちは、相手に自分のイライラが伝わるだけで状況は変わりません。
相手の行動を変えるもっとも賢いやり方は、相手の態度に関係なく「自分がいつも笑顔でいること」です。そうすると、時間がかかっても自分の笑顔に共振共鳴して相手が変わっていく可能性が大いにあります。
「相手をコントロールしてやろう」と思うことから余計なストレスが生まれることを忘れずに。
まとめ
いかがだったでしょうか?
最後に今回のポイントを軽く整理しておきます。
- 感情は良くも悪くも伝染するもの
- 自分の属する集団の雰囲気の一端は自分が作っている
- 自分だけは常にハッピーな気分でいること
記事をブックマークするなどしてぜひ、この3つのことを折に触れてあなたの職場で思い出してくださいね。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。