完璧主義とイライラ&怒りとの無視できないレベルの深い関係
最初に断っておきたいのですが、完璧主義(者)という言葉は「完璧な人」を指す言葉ではありません。そもそも、この世に完璧な人間などいません。
完璧主義者とは「完璧でなければ気が済まない人」、さらにいえば「完璧でなければならない」という強迫観念を持った人のことです。
お察しのとおり、どこまでいっても完璧にはなれないので「こんなんじゃ全然ダメだ」といつも何かに追い立てられるように感じ、焦り、疲弊してしまいます。そのため完璧主義者は常に気が休まる事がありません。「完璧主義者の憂うつ」とは昔から言われていることです。
ストレスと感情
人がストレスを感じるときの感情は、次の3つに大別されます。
- 怒り(自分・他人に対する)
- 怖れ(不安・心配)
- 緊張(プレッシャー)
このうち、最もコントロールの難しい感情が「怒り」です。他の2つが想像したり考えたりする余地があるのに対し、怒りはほとんど思考を挟まない「反応」に近いものだからです。
怒りを引き起こす3つのトリガー
心理学者キャロル・E・アイザードは、怒りの感情には次の3つのトリガーがあると主張しています。
- 我慢
- 妨害
- 不快な刺激
それぞれ、たとえば次のようなものです。
我慢
- モンスター客との商談
- 悪質なクレーマーへの対応
- 上司の理不尽な命令や指示
妨害
- 落ちついて読書ができない
- 忙しくて食事もとれない
- うるさくて眠れない
- 帰省ラッシュの大渋滞
不快な刺激
- 騒音
- 空腹
- 痛みや痒み
- 眠気
- 極端な寒暖
- 他者からの非難
完璧主義と怒りの関係
完璧主義は、これら3つのトリガーすべてに関連していて怒りを増幅させる特徴があります。とりわけ、「過度な我慢」が一番良くありません。自分の思考回路のセルフチェックをしてみてください。
あなたは「~すべき」「~しなければならない」という思考に陥っていませんか?こうしたいわゆる「have to思考」の人は怒りをためやすい傾向にあります。
完璧主義者が怒りに至るルート
完璧主義者が怒りっぽいのには理由があります。「完璧主義」は次の6つの段階を経て怒りに移行します。
- 求める理想が高いので高い目標を掲げます
- その目標実現には大きな忍耐を必要とします
- 忍耐を継続する中で被害者意識がつのります
- その被害者意識はやがて怒りに結びつきます
- 自分だけでなく他人にも怒りが向けられます
- 他人にも我慢や忍耐を要求するようになります
たとえば、家族に対して「お前たちが何不自由なく生活できるのは、誰のおかげだと思ってるんだ?」となじる。
自分が毎日こんな大変な思いで働いているのに「お前ももっと大変な思いをしろ」という感情を妻に対して抱く。自分から見て頑張っているとは思えない同僚に対して無性にイラつき、それが態度や発言に出る。
こういうことが、ステージ「6」の段階です。
怒りの感情が、良い結果を生むことはありません。それは重々わかっていても、抑え方が分からない。こういう人がほとんどではないでしょうか。
多くの場合、怒りそのものを鎮める・忘れる努力をするよりも、完璧主義の思考を変えることで、怒りの感情を適切にコントロールすることのほうが無理なくできます。
完璧主義思考を変えて怒りをコントロール
怒りをコントロールするために、ここでは3つのアプローチを紹介します。
1.他人と自分の違いを受け入れる
まず、「他人と自分とは考え方も価値観も異なる」という事実を受け入れなくてはいけません。
あなたの100%は他人の100%ではないし、他人の100%はあなたの100%ではないのです。所詮、「自分と他人は違う存在なのだから仕方ない」とポジティブに割り切ることです。
2.なにごとも80点主義でやる
80点と聞くとすぐ「2割も足りない」と考えがちですが「8割もできたぞ!」とできたほうに注目します。100%の出来が求められるような仕事はあっても稀です。ほとんどの仕事は8割がたの出来ばえでOKなのです。
80%の出来でOKを出せる。
そんな自分を受け入れる余裕が他者にも及んでくれば、他人の小さな失敗に目くじらを立てることもなくなり、今よりずっと寛容になれるはずです。自分を許せないから他人も許せないのです。
3.イメージ通りにいったら奇跡
イメージ通りに物事が進まないことは良くあることです。そして「やっぱり俺はダメだなー」と落ち込むことも。しかし、落ち込んだ状態からいきなりポジティブへというのはやはり無理があります。
まずはネガティブな自分を認めてあげることからです。「人間だからこんなこともあるさ」と失敗して凹んでる自分を謙虚に受け入れる。この不完全を受け入れられると立ち直ることができます。
反対に、自分の行動に対する疑念が強くなってしまうと、次回から行動に移すことが難しくなるので要注意です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
怒りに結びつきやすい完璧主義について解説してきました。完璧主義はAll or Nothing的な思考に陥りがちです。
これは「白か黒か」「0か100か」「完璧か最悪か」といった二分割でしか物事をみられない、完璧主義者に特有の思考です。
参考記事:曖昧は嫌い?白黒ハッキリ派ほどストレスに弱いという事実
いき過ぎた完璧主義は、自分も周りも苦しめることになります。生きづらさを感じている場合は、完璧主義の罠に陥っていないか一度見直してみてください。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願って。