ストレスで太る2つの理由とコルチゾールの9つのリスク
「ストレスのせいで太る」「ストレスで過食する」
などというのは単なる甘えだと思いますか?
じつは、肥満の主な要因はストレスだという説もあります。
そして、ストレスで太る理由は大きく2つ。
医師の立場から、「ストレスを受けるとなぜヒトは太るのか」その理由を解説していきます。
ストレスとはそもそも何であるか?
ストレスとはシンプルに「外部からの刺激に対する心身の反応」と定義して問題ないと考えます。
ちなみに、広辞苑ではストレスは医学用語として次のように解説されています。
種々の外部刺激が負担として働くとき、心身に生ずる機能変化・ストレスの原因となる要素(ストレッサー)は寒暑・騒音・化学物質など物理化学的なもの、飢餓・感染・過労・睡眠不足など生物学的なもの、精神緊張・不安・恐怖・興奮など社会的なものなど多様である。
「ストレス=悪いもの」というイメージが強いかもしれませんが、じつはすべてのストレスが悪とは言い切れません。
たとえば、「社会との関わり」や「適度な運動」といった一見好ましい刺激もストレスの一種であり、ストレスは健康維持や自分を成長させるのに必要なものなのです。
とはいえもちろん、度を超えたストレスは有害です。
ストレスで太る2つの理由とは?
私は、ストレスこそが肥満の主な原因だと考えています。
医学的にも、「ストレスで食欲が増す」というのは明らかで、現代のように食品があふれた環境であれば、ストレス過多の人は必然的に太る傾向になります。
ストレスが原因で太る理由は2つあります。
1.ステロイドホルモン(コルチゾール)が増える
それが物理的なものであるにせよ、精神的なものであるにせよ、ストレスはストレスホルモンを増やします。
ストレスホルモンの中でも特にステロイドホルモン(コルチゾール)は食欲を増進させ、肥満の原因になります。
実際に病気や薬などでステロイドが増えると、以下のような副作用がおきます。
ステロイドの副作用9つ
1.食欲が増す(糖尿病、肥満のリスク)
ステロイドホルモン(コルチゾール)にはインスリンの働きを阻害する作用があり、血中濃度が高まると血糖値を上げてしまいます。
インスリンには食欲中枢に作用して満腹感を感じさせる作用もあるのですが、ステロイドホルモンが増えることでその働きが抑えられて、逆に強い空腹感を引き起こすことになります。
2.免疫抑制(免疫力の低下)
免疫細胞(リンパ球)の作用を抑えたり、抗体の量を減らしたりする作用があります。
3.血圧を上げる(高血圧のリスク)
電解質を調節する作用があり、体内のナトリウムを増やします。
4.中性脂肪・コレステロールを増やす(動脈硬化のリスク)
脂質代謝にはインスリン作用が大きく関与しており、インスリンが効きにくいとコレステロール値が上がります。
5.骨量を減らす(骨粗鬆症のリスク)
骨形成を低下させ、骨吸収を上げて、骨の量を減らします。腎臓からのカルシウム排泄も増やしてしまいます。
6.脂肪の移動(中心性肥満のリスク)
顔と体幹に脂肪が移動し、満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満を起こします。
7.胃酸を増やす(胃潰瘍のリスク)
胃酸を増やすと同時に胃粘膜の防御も弱くなるため、胃潰瘍を起こしやすくなります。
8.脳への作用がある(ステロイド精神病のリスク)
少量のステロイドであれば、精神が高揚し、元気になったような気がしますが、大量にステロイド薬を投与した場合、うつ病になることがあります。
9.ステロイド薬を急にやめると危険(副腎不全のリスク)
ステロイド薬を長期間使った場合、ステロイドを造っている副腎が休んでしまうため、急にやめると血圧や血糖が下がり、危険な状態になります。
薬をやめるときは、医師の指導のもと、徐々に漸減してゆく必要があります。
以上、9項目を見てきましたが、これらは強いストレスを受けた場合に起こってくる現象と共通しており、ステロイドホルモンの影響が大きいことがわかると思います。
2.栄養素の消費
ストレスは大量のビタミン、ミネラルを消費させます。
その結果、脳は栄養不足だと判断し、食欲を刺激して栄養を補給しようとするため、食欲が暴走しやすくなります。
ちなみにビタミン、ミネラルは、タバコや飲酒でも大量に消費されることがわかっています。
恐らく、人間は外傷や飢餓などの物理的なストレスに対しては、脂肪をたくさんつけることで適応してきたものと思われますが、近代の精神的・慢性のストレスにはどうやらうまく対応できていないようです。
ストレスと上手くつきあう3つのヒント
1.受け止め方をかえる
このサイトのコンセプトどおり、生きてゆくうえでストレスをなくすことはできませんが、減らすことはできます。
私なりのストレスに対する認識を書いておきます。
まず、ストレスに実体はありません。結局、自分自身が外部からの刺激をどのように解釈し、受け止めるかによって、ストレスは変わってきます。
例えば、仕事でミスをして上司に注意された場合。
Aさんは「ミスをして怒られてしまった。評価が下がってクビになるかもしれない。」と考えました。
一方、全く同じ状況で、
Bさんは「怒るのはとてもしんどい。見込みがない人間には無駄なエネルギーを使わないはず。ありがたい、自分は期待されているから注意されるんだ。次はミスをしないように注意しよう。」と考えました。
世の中のほとんどの人はAさんのような考え方ですが、どうせならBさんのように生きたいものです。
2.マインドフルネスしてみる
最近、マインドフルネスという言葉が流行っており、医療の分野でもストレス軽減、疾病予防に効果があるとして注目されています。
私は「あるがまま今この瞬間を生きよ」という、禅の教えをカタカナで言い換えたものと理解しています。
悩んだり、不満を言ったりしたところで、現状は変わりませんので、今を感謝して生きるのが最も賢い方法だと思います。
3.栄養素をしっかり摂る
ストレスで消費されたビタミンやミネラルを補うために、加工食品をできるだけ避けましょう。
また、科学的にも一部のサプリメントはストレスホルモンを減らすことがわかっており、私もいろいろ試してみましたが、たしかにストレスフルな外来の後の頭痛や疲労感に効果がありました。
物理的な補給で解決できるなら、それが最も簡単です。
さいごに
この度、縁あってストレスフリーnavi.にて記事を書かせていただくことになりました。
今後も医師の立場から、健康に有用な情報を発信してゆきます。どうぞよろしくお願いいたします。