上昇する初産の平均年齢。43歳限界説の根拠とリスクとは?
女性の第一子出産の平均年齢は、年々高齢化の一途をたどっています。厚生労働省のデータを見ると、2013年の初産の平均年齢は30.4歳です。
統計は1950年の24.4歳から始まり、初産の平均年齢が1歳上がるのに10~20年かかっていました。
ところが、2003年の初産の平均年齢が28.3歳であり、2013年までの10年間で2歳も上がっています。これは、5年で1歳上がるペースに加速しているということになります。
初産年齢がこのように急速に高齢化している背景には、働く女性が増えたことや価値観の変化による晩婚化が進んでいることが大きく影響しています。
更には、子育てや教育費の増加・育児への不安など様々な要因があります。
では、女性はいったい何歳までに初産を迎えるとよいのでしょうか。
初産年齢の限界は本当に43歳までなのか?
「閉経の10年前まで産める」といわれていますが、個人差があるので一概に「〇〇歳」とは決められません。
そもそも、自分の閉経がいつなのか、どうやってわかるというのでしょうか?
一般的に、閉経は40歳代後半から50歳代中頃に訪れるといわれています。
そこから逆算すると、30歳代後半から40歳代中頃に出産の限界を迎える人が多いと考えられます。
これは出産経験のある経産婦も含んだ年齢であり、初産の場合は、そこからさらに2年ほど前倒しすることになります。
よって、閉経が45歳だとすると、初産可能な年齢は33歳ということになります。また、閉経が55歳と仮定すると、初産可能な年齢は43歳までということになります。
厚生労働省の出産数の統計(初産・経産を含む)を見ると、40歳以上の出産数が年々増加しています。
その中でも特に、50歳以上の出産数は、平成20~22年では年間20人前後だったのが、平成23年には年間41人に倍増しています。
このように、初産のうち30歳以上の人が占める割合が一割を超える晩産化が進み、WHO(世界保健機構)をはじめとする諸外国の定義にならって、日本における高齢初産(高齢出産)の定義は満30歳から引き上げられて、「満35歳を超えた初産」と改められています。
また、閉経年齢については、遺伝的傾向があるといわれています。
ご自身のお母さまやおばあちゃんの閉経年齢から推測してみてはいかがでしょうか?
年上のお姉さんがすでに閉経を迎えていたら、それも参考になるかもしれません。
医学的にみる初産にもっとも適した年齢とは?
妊娠に必要な女性ホルモン分泌のピークは、17~18歳頃です。その後、30歳頃までは安定して分泌されていますが、30歳を過ぎると減少しはじめます。
出産期に赤ちゃんが死ぬ確率(周産期死亡率)や、出産の時に母体が死亡する確率(妊産婦死亡率)が最も低いのは、20歳代です。
生まれた赤ちゃんの先天異常の確率も、20歳代が最も低くなっています。妊娠・出産の安全性を総合的に考えると、20~25歳が初産の「適齢期」といえます。
20歳代前半で自然に「子どもが欲しい」「子どもを産みたい」と思えることが理想ですが、現実にはなかなか思うようにベストタイミングにはならないようです。
エッ?卵子も初産の年齢と同じだけ歳をとっている!
意外に思われるかもしれませんが、卵子は、私たちがまだ胎児の時に700万個作られています。そして、それ以降は、新しく作られることはありません。
ですから、私たちが年齢を重ねるごとに、卵子も一緒に歳をとっていくのです。ということは、初産の年齢はそのまま卵子の年齢ということになります。
卵子の老化を早める原因は、加齢以外にもたくさんあります。卵巣の病気、環境汚染、過剰なストレス、偏った食生活、喫煙、からだの冷えなどです。
学生時代や若い頃にしていたミニスカートにナマ足は、卵巣や子宮を冷やして卵子の老化を早めます。実際、これが月経困難症や不妊症の原因にもなっているのです。
卵子は、正確にいうと「原始卵胞」という卵子のもとになる細胞が、第一減数分裂の途中で眠ったままの状態で保存されています。
この「原始卵胞」が順番に目を覚まして減数分裂を再開し、一人前の卵子に成長します。
この時、卵子が均等に半分に分かれるのが正常ですが、「原始卵胞」が老化していると大きさが不揃いに分裂して、染色体の数も均等になりません。それで、染色体異常の卵子ができるのです。
染色体異常の卵子が受精しても大半は流産してしまいます。無事に生を受けることができても、障がいを持った赤ちゃんが生まれることになります。
この染色体異常による流産のリスクは、30歳代後半は19.7%なのに対して、40歳代後半では40.8%にはね上がります。
また、老化した「原始卵胞」は正常に受精できても、受精卵が成長してゆく細胞分裂に失敗する確率が高くなっています。そうすると、異常のない受精卵でも流産してしまいます。
なんと男性側にもある!初産に最適な年齢
精子のモトになるのは「精原細胞」(精祖細胞)と呼ばれるものです。
精原細胞が精子になるまでに、70日ほどかかります。それから精子が成熟して精巣に貯蔵されるまでに、約2週間かかります。つまり、精子の生産から射精まで約3ヵ月を要するわけです。
精子は1日に5000万~1億個作られて、その生産は昼夜を問わず一生続きます。そのイメージから「精子はいつも新鮮で老化しない」という誤解が生じています。
ところが、精子を作る精巣は、加齢とともに老化するのです。そのために精子の外観上の異常はなくても、35歳頃から受精能力が低下しはじめます。
やがて高齢になるほど精子の形や機能に異常が多くなり、受精能力がますます減っていくので、女性の妊娠率も低くなります。
女性が結婚してから自然妊娠するまでの期間は、男性が20歳代の場合で平均6ヵ月、30歳代で平均10ヵ月、40歳代後半では1年半かかるといわれています。
これは、女性側の問題だけでなく、夫の年齢も妊娠の確率に関係があることを示しています。
精子のDNA、すなわちヒトを作る設計図は、40歳以上で突然変異が増えはじめ、生まれてくる子どもの先天異常の確率が高くなります。
男性側の妊娠・出産適齢期に関しても医学的な研究がなされており、20歳代が理想的だと考えられています。これは、女性の初産の適齢期とも一致していますね。
さいごに
わたしたちの人生において、出産がゴールではありません。そこから育児や子育てが始まるのです。
第二子、第三子も望むのであれば、初産年齢は生み終わりから逆算してある程度若くなければならないでしょう。
高齢初産は、母子ともにリスクが高くなるだけでなく、その後の人生設計にも大きく影響します。
定年後にも十分な教育費を確保できるのか、あるいは高齢の親の介護が始まってしまうのかなど、私たちが歳をとるごとにさまざまな負担が増えていきます。
体力と健康、育児や子育て、仕事との両立、収入の推移などをよくふまえたうえで、若いうちにしっかりとライフプランを設けることが大切ですね。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。