肥満遺伝子チェック表あり!あなたの太りやすさはどのタイプ?
同じような食事制限や運動を行っていても、人によって効果の有無や痩せ方に差があります。それはいったいなぜなのでしょう?
実はその答えは非常にカンタンで、私たちは「一人ひとり体質が違うから」です。
そこで最近注目されているのが「肥満遺伝子検査」です。これは、自分が持って生まれた肥満遺伝子の型を知って、自分の体質にピッタリの効果的なダイエットのアプローチを選べるようになる検査です。
病院の肥満外来(ダイエット外来)で受けることもできますが、自宅でも簡単に調べられる市販の肥満遺伝子検査キットの手軽さが人気のようです。
それら肥満外来や検査キットで特定した「自分の肥満遺伝子の型」をどのようにダイエットに活かすのか、本記事で詳しくみていきましょう。
まだ自分の肥満遺伝子の型を知らないという方は、記事内の簡易チェック表をご活用ください♪
太りやすい体質と肥満遺伝子の関係
現在、世界的に報告されている肥満遺伝子は101種類ほどあります。その中でも日本で詳しく研究されているのは、まだ56種類ほどだといわれています。
更に、1つの遺伝子の変異で明らかに肥満になるというものは、10種類くらいしかわかっていません。
次の3つの肥満遺伝子が日本人に多く、一般的にはよく知られています。
- β₃アドレナリン受容体(β₃AR)*倹約遺伝子
- 脱共役たんぱく質1(UCP1)
- β₂アドレナリン受容体(β₂AR)
肥満遺伝子の中で、脂肪の分解やエネルギー消費を調節する遺伝子を「倹約遺伝子」といいます。いわばとても低燃費な遺伝子で、少ないエネルギーで体を動かし、余らせたカロリーを脂肪としてため込むのが特徴です。この遺伝子を持つ人は100%内臓脂肪型肥満になることがわかっています。
日本人は欧米人に比べて、この倹約遺伝子を持っている人が2~4倍もいるため、内臓脂肪型肥満が多いという特徴があります。
参考:
日本肥満学会誌「肥満研究」Vol.12 No.3 2006トピックス
日本肥満学会誌「肥満研究」Vol.15 No.3 2009トピックス
肥満遺伝子の3つのタイプ
- β₃アドレナリン受容体(β₃AR):34%が保有する倹約遺伝子【りんご型】
- 脱共役たんぱく質1(UCP1):25%が保有【洋なし型】
- β₂アドレナリン受容体(β₂AR):16%が保有【バナナ型】
日本人に多いこれら3つの肥満遺伝子について、詳しく見ていきましょう。
1.β₃アドレナリン受容体(β₃AR):34%が保有する倹約遺伝子【りんご型】
この肥満遺伝子の変異がある人は、40歳以上になると安静時代謝量が200kcalも少なくなります。
その分太りやすいのですが、一方でこの肥満遺伝子を持っていても太っていない人もいます。実際、「この遺伝子を持っていると必ず太る」というような遺伝子は、肥満遺伝子の中の0.1%しか確認されていません。
この肥満遺伝子には、次のような特徴があります。
【りんご型の特徴】
- 日本人に多い
- 糖質の代謝が悪く糖質で太りやすい
- お腹周りが太る(内臓脂肪がつきやすい)
- 男性に多い傾向がある
- 「りんご型」体型
- 糖尿病や脂質異常(高脂血症)、脂肪肝などに注意
2.脱共役たんぱく質1(UCP1):25%が保有【洋なし型】
この肥満遺伝子をもつ人は基礎代謝が100kcal低くなります。また、この肥満遺伝子には、次のような特徴があります。
【洋なし型の特徴】
- 脂質の代謝が悪く脂質で太りやすい、痩せにくい
- 下半身が太りやすい(皮下脂肪がつきやすい)
- 女性に多い傾向がある
- 「洋なし型」体型
- がんや女性では子宮関係の病気に注意が必要
3.β₂アドレナリン受容体(β₂AR):16%が保有【バナナ型】
これは倹約遺伝子ではなく、基礎代謝量が200~300kcal増える「痩せる遺伝子」です。
この遺伝子を持っている人は、テレビなどでおなじみのいわゆる「痩せの大食い」と呼ばれる人たちです。実際に「大食い」番組に参加した人20人を調べたところ、2人がこの遺伝子変異を持っていました。
この遺伝子を持っていない他の参加者は、撮影の休憩中は食べずに、吐いたり下痢したりしているのに対して、彼らは休まずにどんなに食べ続けても平気です。そして、太りません。
この遺伝子は「逆肥満(痩せる)遺伝子」ですが、次のような特徴があります。
【バナナ型の特徴】
- 線が細くて太りにくい
- 筋肉がつきにくく一度太ると痩せにくい
- 日本人には16%しかいない
- 男女の割合はほぼ半々である
- 「バナナ型」体型
- 心臓病、うつ病、低血圧などに注意
エネルギーの消費が多いので、本来は筋肉になるはずのたんぱく質まで消費してしまうため太りにくくなっています。
ところが、加齢や生活習慣などで一度太ってしまうと、エネルギーを消費する筋肉が少ないのでなかなか痩せられません。そのため「肥満遺伝子」と合わせて「肥満関連遺伝子」というグループで考えられています。
4つ目のタイプ「アダム・イブ型」体型
上記の3つの肥満遺伝子をひとつも持っていない人が25%います。遺伝的に太る要素は少ないのですが、生活習慣に問題があって太るタイプといえるでしょう。
参考:
タニタの健康応援ネット からだカルテ
日本肥満学会誌「肥満研究」Vol.12 No.3 2003<トピックス>
肥満遺伝子のセルフチェック
それぞれ持っている遺伝子によって、食事の好みや生活習慣、体型だけでなく性格まで特徴が影響されるといわれています。
ここで、あなたがどの肥満遺伝子タイプかチェックしてみましょう。
以下、3つの肥満遺伝子タイプ別に各15問の設問があります。計45問をチェックし、最も多くチェックがついた診断シートが、あなたの肥満遺伝子のタイプである可能性が高いです。
【リンゴ型診断シート】
- 太るとウエストがきつくなる
- ジーンズの試着で足やお尻はOKでもボタンが締まらないことがある
- 力を入れてもお腹 (おへそ周り) があまり凹まない
- 太りやすく、体重の変動が割とあるほうだ
- お腹や二の腕、お尻などのお肉がボヨンと柔らかい
- 胸のサイズはどちらかというと大きめである(女性の場合)
- 顔の輪郭は丸顔か卵形で、太ると二重あごになりやすい
- 顔の肌は皮膚が薄く乾燥肌になりがち
- ダイエットをすると、わりとすぐに体重や体脂肪が落ちる方だ
- 色々なダイエットをとりあえずやってみるけど、3日坊主で終わることが多い
- 父親と母親のどちらかあるいは両方がリンゴ型のような気がする
- 食べ物はライスやパン・パスタ・麺類などが大好き
- 楽天的でマイペースな性格である
- 運動するのは嫌いではないが長時間は続かない
- カロリーを考えなければ、アイスクリームより大福もちを食べたい
出典:肥満遺伝子ダイエット
【洋ナシ型診断シート】
- 太るとズボンの太ももやお尻がきつくなる
- わりとガッチリした筋肉質タイプだと思う
- 横から見ると上半身が薄いかも。座っていると痩せてみられることも
- 胸のサイズは普通かどちらかというと小さめ(女性の場合)
- 顔の輪郭は卵形orあごが細く逆三角形っぽいシャープな印象
- 首のあたりがむくみがちだ
- ニキビや吹き出物などの肌トラブルが多い
- 太ももやお尻は張っていて硬い
- ダイエットをしても、なかなか体重や体脂肪が落ちない
- 両親のうちどちらかの体型が洋なし型っぽい
- 「マジメでしっかり者」といわれることが多い
- 食べ物は主食よりおかずが好き
- 唐揚げやフライなど揚げ物が好き
- 負けず嫌いで、頑固な性格である
- 運動すると決めたら、限界まで頑張りたくなる
出典:肥満遺伝子ダイエット
【バナナ型診断シート】
- ジーンズ選びの際にサイズで苦労したことはない
- 若い頃からずっとダイエットの必要性を感じたことがない
- 胸のサイズは小さい方だ(女性の場合)
- 顔の輪郭は細おもて
- 肉が薄い分、シワが気になる
- 筋肉も脂肪も薄くて、触ると全体的に硬い感じ
- 父親か母親の体型がバナナ型っぽい
- 「食べても太らないよね」といわれる (いわれていた)
- 「神経質だよね」といわれることが多い
- かなり几帳面な方だと思う
- 寝起きが悪く、なかなかシャキッとしない
- 若い頃から野菜や果物、豆類などヘルシー系の食べ物が好き
- 食事を抜いても気にならない
- 体があまり柔らかい方ではない
- 運動は嫌いではないが、すぐに疲れるのでやろうと思わない
出典:肥満遺伝子ダイエット
▼自動集計してくれるサイトもあります。
きれいラボ 遺伝子ダイエット!あなたの遺伝子はどれ?
年齢が高くなるにつれて次第に「生活習慣」の影響が大きくなってくるので、セルフチェックの結果と実際の遺伝子検査の結果で肥満遺伝子の型が一致しない場合も出てくるかもしれません。
ちなみに、現在40代のわたしは市販の遺伝子検査キットで「洋ナシ型」だとわかっています。しかし、上記のセルフチェックではすべてが「りんご型」に90%以上当てはまっていました…。
私のように、たとえ実際に持っている遺伝子と違っていても、肥満遺伝子のタイプをチェックすることは「今の自分の生活習慣」を見直し改めることにつながるでしょう。その意味でも上記のようなチェックをしてみることは有意義だと思います。
とはいえ、肥満遺伝子のタイプに沿ったダイエットメニューは効率的であることは間違いありません。
「自分の肥満遺伝子の型が知りたいっ!」
というあなたは肥満遺伝子検査キット7選へ。
「遺伝子の特性にあったダイエット法を知りたいっ!」
というあなたは肥満遺伝子別ダイエット方法へ。
肥満遺伝子の影響と年齢の関係
一般的に20歳くらいでは、まだ基礎代謝量の低下もなく、生活習慣の影響も少ない時期です。ところが、40歳を超えると、生まれ持った肥満遺伝子と基礎代謝量に相関関係が出てくるということがわかってきました。
肥満遺伝子の影響で基礎代謝量が実際に減りはじめるのは40歳以降になってからだといわれています。そこへ加齢と生活習慣による基礎代謝量の減少が重なり、40歳以降では肥満になりやすくなるのです。
その点、自分の肥満遺伝子の型と太りやすさの傾向があらかじめわかっていれば、その肥満遺伝子の特徴に合ったダイエットや運動などの習慣を身につけて、中年以降も肥満を予防することが容易になります。
基礎代謝量と安静時代謝量(補足)
一般的に病院の外来などで測定する基礎代謝量は、30分ほど安静にしてから測定するもので、厳密な基礎代謝量よりも150kcalくらい高く出ます。そのため、安静時代謝量として区別する考え方があります。
本来の基礎代謝量は、入院して翌朝目覚めた時に測定します。寝ている間も休まずに動いている心臓、腎臓、肝臓などのエネルギー消費量のみを測定するもので、筋肉でのエネルギー消費の影響は最小限になっています。
参考:日本肥満学会誌「肥満研究」Vol.12 No.3 2003<トピックス>
肥満遺伝子のリスクについて
生命保険会社は、「肥満遺伝子を持っている人に対しては、保険の掛け金を5万円高くする」という方向性で、肥満遺伝子に注目しています。それほど健康に大きな影響を与える因子として認識されているわけです。
これは病気発症リスクの高い喫煙者の保険料が、高く設定されているのと同じ考え方のようです。
肥満遺伝子って、そもそも何なんですか?
遺伝子とはご存じのとおり、両親から受け継いだ「あなた」の設計図です。母親と父親から1本ずつもらった遺伝子が2本で1対のらせん状に丸まっています。肉眼では見えない遺伝子ですが、それを全部伸ばすと170cm近くあるといわれています。
人間の遺伝子というものはほぼ共通しており、わずかに0.1%の違いしかないといわれています。その0.1%の違いが、姿や性格、体質などの個人差を作り、別々の個性を生み出しています。
出典:ジーンライフ 遺伝子講座
遺伝子のわずかな違いは、DNAの塩基配列が1カ所だけ別の塩基に置き換わる現象「SNP(一塩基多型)=スニップ」が元になっている「変異」と、遺伝子の約10万分の1個程度の確率で塩基が抜ける「ミス」という現象や、自然界にある紫外線の影響で塩基の並び方が変わる変化などがあります。
肥満遺伝子は「SNP」の変異でできた遺伝子です。
遺伝子は、母親と父親から受け継いだ2本のらせん状のDNAで構成されています。まったく変異のないものを(―)「ワイルド」(野生型)、両親のどちらか一方から変異した遺伝子を1個もらうと(+)「ヘテロ」、両親の両方から変異した遺伝子を2個もらうと(++)「ホモ」といいます。
1つの遺伝子について、変異無し(―)「ワイルド」、変異1個(+)「ヘテロ」、変異2個(++)「ホモ」の3種類があります。生物の授業で習ったかもしれませんね。
更に、男女の性別によって遺伝子の優先順位(影響力の強さの順番)が異なるので、3つの肥満遺伝子の組み合わせは54パターンも存在することになります。
遺伝子の「変異」は、必ずしも命の危険につながる不利な異常とは限りません。環境に適応して生き残るための個性(進化)でもあるわけです。
参考:
MYCODE 遺伝子とは?
遺伝子検査とセットで“販売”しなければならないもの
さいごに
年齢や生活習慣などによる太りやすさの度合いに、肥満遺伝子の影響があることはすでにわかっています。
さらには、その特徴に適した工夫でダイエットの効果をより高められるということが、医学的な研究で明らかになってきました。
「肥満遺伝子」はいかに健康的に効率よくダイエットを続けるかというポイントを教えてくれます。もしも、あなたが「ダイエットがうまくいかない」、「リバウンドを繰り返してしまう」と悩んでいるのなら、肥満遺伝子を調べてみる価値はあるでしょう。
また、一人で頑張ることに限界を感じているのなら、健康保険を使った肥満外来での「治療」という選択肢もあるので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
関連記事 ▶︎病院の肥満外来(ダイエット外来)の治療や薬。保険適用の範囲とは?