【よくわかる】痛風と高尿酸血症の違いとは?
中高年の男性の多くが悩まされているという「痛風」。この痛風と同じような病気に、高尿酸血症という病気があります。
痛風と高尿酸血症には、一体どのような違いがあるのでしょう。
そして、痛風や高尿酸血症を効果的に改善するには、どんな工夫があるのでしょうか?
この記事ではなるべく分かりやすくなるよう図を多用して解説しています。ぜひ最後までお付き合いください。
痛風と高尿酸血症の違い
高尿酸血症は、血液中に溶けている尿酸の量が7mg/dlを超えた場合の病名です。単に血液中の尿酸値が高いだけでは、痛風とはいわれません。
痛風特有の激痛や関節炎などの症状を伴った場合に、痛風という病名がつきます。
出典:医療法人 神楽岡泌尿器科
高尿酸血症は、メタボリックシンドロームと密接に関係しており、内臓脂肪蓄積型の肥満が大きな要因のひとつになっているといわれています。
では、その原因となる「尿酸」が何なのかを詳しくみていきましょう。
尿酸の原料はプリン体
人の身体は、新陳代謝で細胞が生まれ変わる時に、細胞核の中の遺伝子をコピーして細胞分裂をします。
その時に、核酸(DNA・RNA)がプリン体→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸へと変化します。
新しく細胞が作られるたびに、遺伝子のコピーでプリン体が生産され、最終的に尿酸ができるというわけです。
そして、新しい細胞ができるのと同時に、古い細胞も分解されていきます。その時にも、同じようにプリン体から尿酸が作られています。
この他にも、プリン体が体内で生産されるサイクルがあります。
人間は、運動をする時にATP(アデノシン三リン酸)からエネルギーを放出するのですが、その時にもプリン体が作られています。
つまり、人が生きて活動している限り、痛風や高尿酸血症の原因であるプリン体は、体内で自動的に作られ続けているということになります。
高尿酸血症の3つのタイプ
高尿酸血症には、次のような3つのタイプがあります。
出典:尿酸値を下げよう.com
- 尿酸産生過剰型:尿酸がたくさん作られるタイプ(12%)
- 尿酸排泄低下型:尿酸の量は普通でも排泄が悪いタイプ(60%)
- 混合型:尿酸生産過剰型と尿酸排泄低下型が一緒になっているタイプ(25%)
日本人の場合、尿酸排泄低下型が高尿酸血症の半数以上を占めています。したがって、高尿酸血症の予防・改善の鍵は、この「排泄を促す」ところにあるといえるでしょう。
体内のプリン体のうち、必要量の20~30%は食品から摂取され、70~80%は全身の細胞で作られます。
なお、プリン体から作られた尿酸は体内に一定量がストックされています。余分な尿酸は、約70%が尿から排泄され、残りの約30%が汗や便から排泄されます。
出典:尿酸値を下げよう.com
「尿酸プール」は、体内の尿酸の総量のことです(プール=蓄え)。これが人体には平均して1200mgほどあり、生産と排泄で毎日半分以上が入れ替わっています。
この尿酸の産生と排泄のバランスが崩れて、血液中の尿酸が飽和状態になると「結晶化」され、おもに足の関節などに蓄積して痛風になります(飽和食塩水から塩が結晶になるのと同じような現象です)。
高尿酸血症で痛みなどの自覚症状がない期間が長く続くほど、痛風になるリスクは高くなります。
痛風ってそもそもどんな病気?
次に、痛風がどんな病気なのか詳しくみていきましょう。
痛風のもとは「高尿酸血症」
痛風は「高尿酸血症」という病気が先にあって、血液中に溶けきれなかった尿酸が結晶になり、おもに足の親指の関節などに沈着して激しい痛みを生じる状態をいいます。
尿酸結晶が大量に蓄積すると、手足の関節や耳などに尿酸結節というものができます。これは、リウマチや外反母趾など、他の病気と間違われることもあるので、注意が必要です。
出典:赤池循環器消化器内科
痛風になる人の約90%は男性で、好発年齢は40代~50代といわれています。
女性に痛風の人が少ない理由は、女性ホルモンの働きで尿酸が男性よりも多く排泄されるため、痛風になりにくいからです。しかし、女性ホルモンが減少する更年期以降の女性は、痛風になる可能性が高くなってきます。
そして最近では、糖分の摂り過ぎや運動不足、過度のアルコール摂取などが原因で、20代~30代の若い人にも痛風が増えているといわれています。
痛風特有の激痛が起きる仕組み
尿酸が血液中に溶け込んでいる高尿酸血症の状態では痛みが出ません。
ですが、血液に溶けきれなくなった尿酸が結晶になってしまうと、白血球が体に有害な「異物」と認識して、排除するために結晶を食べる「貪食」(どんしょく)という働きをします。
ところが、この結晶は分解できません。すると、白血球の一種である好中球の中のリソソームが壊れて数種類の「炎症物質」を放出します。
その結果、強烈な炎症が起きて、あの痛風の激痛が生じることになります。
ちょっと心配になってきた方。痛風の危険度はこちらのサイトでセルフチェックできます。
▶︎痛風の症状改善お助けサイト「あなたの痛風危険度は?」
上記サイトでは結果を自動集計してくれますが、チェックが3つ以上あると、痛風予備軍かもしれません。
もしも6つ以上あった場合は、一度病院を受診してみることをおすすめします。
痛風を改善する効果的な3つの方法
痛風を改善するには、次のような3つの方法があります。
- 食生活の改善
- アルコールの制限
- 適度な運動
表1)出典:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版(日本痛風・核酸代謝学会)
1.食生活の改善
痛風や高尿酸血症を改善する、または予防するためには、1日のプリン体の摂取量を400mg未満にすることが推奨されています。
その他に、次のような5つの注意点があります。
- 1日の適正なカロリーを守る
- 栄養のバランスを整える
- 尿をアルカリ性にする食品を食べる
- 水分を1日に2ℓは飲む
- 塩分と糖分を控える
表2)出典:しあわせサプリ
1日400mgのプリン体は、表2を見ると、カツオの刺身1人前と鶏レバー串焼きを1本食べると軽くオーバーしてしまいます。これが、晩酌のツマミであれば、アルコールが分解されてできる尿酸が、さらに上乗せされてしまいます。
栄養バランス・アルカリ食品・減塩・糖の摂取を減らす
体をアルカリ性に保つことは尿酸の結晶化を抑え、尿からの排泄を促して痛風の予防・改善に役立ちます。
野菜や果物を積極的に取り入れることで、ビタミンやミネラルを補給し、体をアルカリ性に保つことができます。
痛風には、高血圧も合併しやすいため、塩分を減らすことは高血圧の予防・改善にも有効です。塩分の摂り過ぎは高血圧だけでなく、腎臓に負担をかけて尿酸の排泄を悪くする可能性があります。
2015年4月1日に厚生労働省基準は、1日の塩分摂取量を女性は7g、男性は8g未満に改定しました。
それに対して、高血圧学会の推奨値は、6g未満です。さらにWHO(世界保健機関)の目標値は、5g未満とされています。
また、糖分を大量に摂取すると痛風発症のリスクが約2倍になることがわかっています。
糖分の中でも、とくに果糖の摂取量が多いほど、そのリスクは高くなります。
甘い飲み物やお菓子、スナック類の摂りすぎは肥満の原因でもあります。ファストフードではなく、きちんとした食事でバランスよく栄養を摂ることが大切です。過食をせずに、食事の適正な摂取量を守りましょう。
利尿を促す水分が重要
1日に1.5ℓ~2ℓの水分を摂ること。これだけでも、痛風の予防と改善にかなり効果があります。
その水分の中に、コーヒーやお茶などの利尿を促す飲み物を多く取り入れると、さらに効果的だといわれています。コーヒーを1日に5~6杯飲む人の方が、1日に1杯以下の人よりも、痛風になりにくいというデータがあります。
2.アルコールの制限
アルコールは、肝臓で乳酸と尿酸に分解されるので、尿酸が大量に産生されます。しかも、飲酒は脱水状態を招くため、尿酸の排泄が非常に悪くなります。
お酒の中の蒸留酒にはプリン体はほとんど含まれていません。ビールに含まれるプリン体も、よほど大量に飲まない限りは問題にならない量です。
しかし、アルコール自体が体内で生成される尿酸の原料となるので、お酒の種類を問わず飲む量に比例して痛風のリスクが増加します。
また、飲酒の習慣は、お酒と一緒にツマミなどでカロリーオーバーになり、肥満の原因にもなります。肥満も、痛風のリスクを高める大きな要因です。
お酒を飲む時は適量に抑えて、水を補給しながらプリン体の少ないツマミを少量にとどめるようにしましょう。
3.適度な運動
激しい運動は逆効果ですが、適度な運動の習慣は、痛風になりにくいことがわかっています。そのうえ、肥満の予防・解消にも運動はとても有効です。
痛風の予防と改善に有効とされる運動は「有酸素運動」です。
無酸素運動は、乳酸を多量に発生させるので、体が酸性になり腎臓で尿酸の再吸収を促して、排泄を阻害してしまいます。
痛風に効果的な有酸素運動は、ウォーキング、サイクリング、水泳、水中ウォーキングなどがあります。長時間頑張らなくても、1日15分程度を週に3回以上行うことで、効果が得られます。
いきなり無理をせずに、少しずつ習慣にしていけるといいですね。
参考:カラダノート
出典:高橋医院
反対に、激しい運動が逆効果である理由もお話しておきましょう。
運動には、たくさんのエネルギーを必要とします。体を動かすエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)から放出されます。
エネルギーを放出したATPは、ADP(アデノシン二リン酸)に変わります。安静時は、このADPがまたATPに変化して、エネルギーとして再利用されます。
ところが、過酷な運動の場合は、急激に大量のATPを消費するので、ADPがATPに戻る暇がなくなります。
そうすると体は、2つのADPから、ATPとAMP(アデノシン一リン酸)を1つずつ作るサイクルに変化してATPをどんどん補充するようになります。
ここで使われずに残ったAMPが分解されて、大量のプリン体となり尿酸が作られることに。しかも水分補給が少なく大量の汗で脱水状態になりやすいので、尿酸の排泄もきわめて悪くなります。
参考1:おいしく食べて尿酸値を下げるメニュー
参考2:運動しすぎで痛風が悪化!?激しすぎる運動はプリン体を増やす
痛風の痛みがなくても、放置するのは危険!
高尿酸血症を放置すると、高血圧や腎障害、尿路結石、心血管系の病気などを引き起こすリスクが高くなります。
痛風特有の痛みがない無症候性高尿酸血症の場合でも、尿酸値が8mg/dl以上で合併症がある場合や合併症がなくても尿酸値が9mg/dl以上の場合には、病院での治療が必要です。
出典:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版(日本痛風・核酸代謝学会)
主な合併症には、肥満、高血圧、脂質異常(高脂血症)、糖尿病、心血管系疾患(心筋梗塞、脳梗塞)などがあります。
心血管系の病気は、死亡原因のトップにもなっています。
参考:高齢化社会の食生活
出典:高橋医院
さいごに
痛風や高尿酸血症の予防と改善には、生活習慣の見直しが不可欠です。
尿酸の元となるプリン体は、その約8割が体内で産生されています。
食事だけでコントロールできるわけではないですが、高尿酸血症を起こしやすい肥満を予防・改善することや、体をアルカリ性に保つためには、食生活が重要です。
次に大切なことは、水分を十分に摂って、体内の不要な尿酸を効率よく排泄することです。
また、尿酸の「排泄」をスムーズにする効果の高い成分に「サポニン」という成分があります。
サポニンを含む食品としては、高麗人参がよく知られています。一度、試してみるのもよいかもしれません。
あなたの今日がほんの少しストレスフリーに近づくことを願っています。